日本大学松戸歯学部
放射線学講座　教授

金田　隆

はじめに

日本大学松戸歯学部放射線学講座は、歯科医療の中心となる、う蝕や歯周炎ばかりでなく、インプラント、口腔がん、顔面外傷および顎変形症等、顎口腔から頭頸部に至る広範囲の疾患の画像診断を中心とし、診療・教育・研究と幅広い分野を担当しています。

放射線学講座の歴史

1971年5月20日日本大学松戸歯科大学の創立と同時に初代の尾澤光久教授（1971年5月～1993年3月在任：2021年4月27日逝去）のもと放射線学講座は発足され、その後、第2代の鈴木宏巳教授（1994年4月～1998年3月在任：2007年12月1日逝去）、第3代となる私に至っています。

2008年11月3日には永年の教育および研究の功労が認められ、初代主任教授の故・尾澤光久名誉教授は瑞宝中綬章を受章されています。

臨床

従来からCT、MRIを有する国内有数の歯科大学付属病院の放射線科です。2006年4月の新病院開設にあたり、歯科大学付属病院の国内初の電子カルテ導入のため、口内法エックス線検査も含むすべての画像検査がデジタル化されました。これによりフィルムレスの、環境にやさしい画像処理や診療体制および患者さんのエックス線被ばく軽減に多大な貢献をしています。エックス線CT検査は撮影シークエンス検討により被ばく量の低減にも成功し、臨床応用しています。特に小児へのCT検査の適正化と被ばく低減化を日々臨床で実践しています。また、CTやMRI検査は地域歯科開業医から年間多数の外部依頼がある国内有数の医療施設となっており、地域に欠かせざる診療科になっています。

教育

学部教育は、50年以上にわたり社会に貢献する多数の歯科医師を輩出してきました。適切な画像検査や読影および診断能力に優れ、放射線を適正に取扱えるバランスのとれた歯科医師養成に重点をおいて教育してきました。学部での基礎実習、臨床での患者実習において実践的な画像検査や機器の管理および医療安全も日常臨床で実施できる歯科医師を養成しています。基礎実習は画像読影、できるだけ患者や術者にも被ばくを避ける技術修得、コンピュータを用いたデジタル画像処理やシミュレーションおよびCTやMRIの実機を用いた検査実習や読影実習を長年にわたり実施しています。また、卒後教育となりますが、本講座は広告できる専門医である歯科放射線専門医養成の認定施設でもあり、毎年、専門医および認定医を輩出しています。

研究および特許

CTやMRIを中心とした顎顔面領域疾患の画像診断やコンピュータ画像処理に関する研究および著書を多数輩出しています。また、講座枠にとどまらず他大学医学部や医療施設および理工学部らとの学部を超えた学際的な共同研究（例：日本大学の新しい放射光LEBRA－PXRの高度利用に関する基盤研究等）も継続しています。学外の共同研究は国内では、東京大学医学部（1990年～MRIの研究）、筑波大学医学部（2004年～MRIの研究）、国立がん研究センター東病院（2004年～口腔がんの画像診断の研究）、岐阜大学医学部（2008年～コンピュータを用いた画像AIに関する研究）との共同研究です。

国外の共同研究ではHarvard大学医学部Massachusetts Eye and Ear Infirmary 放射線科Curtin教授（1997年～CT、MRIの研究）、Boston大学医学部放射線科Sakai教授（2007年～CT、MRIの研究、Texture研究）との研究および留学も交えた人的交流を継続しています。

学際研究の成果は、1998年第84回北米放射線学会にてRadioGraphics賞、1999年第12回国際顎顔面放射線学会にてPoster Award賞、2004年第90回北米放射線学会、2010年第96回北米放射線学会、2013年第99回北米放射線学会、2019年および2020年第105回、第106回北米放射線学会にてCertificate of Merit賞、2016年第102回北米放射線学会にてCum Laude賞を受賞しています。

特許は、光を用いた被ばくのない「う蝕診断装置」を開発（特許第6550653号 特許庁）う蝕診断装置（発明者：金田　隆）があります。

おわりに

本講座では、毎年春に恒例となっている講演会および歓送迎会を開催し、教育講演や研究発表を行い、新旧医局員の情報交流も絶え間なく継続しています。海外も含めた、これら絶え間ない人的な交流が、本講座を支え、過去から現在および未来に向けての本講座の財産の１つと考え、今も継続しています。

略歴

資格